阪急6354F「京とれいん」引退間近乗車レポ
(2022年12月10日/11日)
目次
こんばんは。
先日、私の沿線(当時)である阪急京都本線を駆け抜けるある名車が定期運用を終了しました。
はじめに
今回取り上げるのは6300系。
1975年(昭和50年)にデビューし、2010年まで阪急京都線のフラッグシップとして活躍を続けた特急用車両です。先代2800系のスタイルを引き継ぎ、2扉で転換クロスシートが並ぶ車内は他の一般車両との格の違いを感じさせる王者に相応しい風格を漂わせています。
京都本線の特急用車両が後継の9300系にバトンタッチされると一部の編成は廃車となり、運良く生き長らえた4本の編成も8連から4連や6連に短縮され余生を送ることになります。
今回の記事の主役である6354F以外の3編成は改造された上で4両編成となり今も嵐山線で観光客を乗せながらのんびりと走っています。
6354Fは6300系で唯一京都本線に残ることになったのです。
というのも2011年3月から運行を開始した快速特急「京とれいん」に抜擢されたのでした。
2019年に神戸線7000系7006Fを改造した新しい「京とれいん雅楽」が登場した後も、共存して活躍を続けてきました。十三駅にホームドアが設置された関係で通過を余儀なくされ、後輩の雅楽に「快速特急」の種別を明け渡し、6354Fは「快速特急A」という新しい種別を貰って活躍を続けることに。
しかし、それもそう長くは続きませんでした。
阪急電鉄は2022年12月17日に全線でダイヤ改正を行うことを発表。神戸線・京都線の快速急行が消滅して準特急が誕生することをはじめ、今回のダイヤ改正は内容が山盛りなのですが、その中で快速特急A「京とれいん」の運行終了が発表されてしまいました。
3300系など1960年代に製造された車両がまだまだ存命の京都線系統。6300系も確かに古参車の部類ではあり老朽化を否定することはできませんが、それ以上にホームドアの設置の足枷になっていることが引退要因として大きいように私は推測します。
というのも、この6300系は2扉車である上に、両端の扉が車端部に寄った位置に設置されているため、一般車両や後継の9300系とは扉の位置が一致しません。ただ2扉車であるだけなら中央のホームドアだけ閉め切りにして対応する事例が他の鉄道会社において存在するため、対処可能だと思われますが、特殊なドア位置であることが致命的な問題なのです。
京とれいんが停車する駅は主要中の主要駅ばかり(一番左の紫線が快速特急A)。
今後ホームドアを普及していくにあたり、京とれいんの停車する駅は優先的に設置される可能性もあり、近い将来運行が難しくなることは想像に難くない事実でした。
検査時期も来年に近づいていることもあり、今回のダイヤ改正のタイミングで引退を踏み切ったものと思われます。
ダイヤ改正自体は2022年12月17日土曜日ですが、雅洛共々阪急電車の快速特急は平日の運行がなく土休日限定の運行であるため、実際には2022年12月11日日曜日がラストランとなりました。
6354F乗り納めのため往復乗車!
12月10日と12月11日の2日間にわたり、乗り納めと撮影・録音収録をしてきましたので、そのときの模様をお伝えします。
2022年(令和4年)12月10日。大阪梅田駅2階改札口。
この日はこれまで一度も乗ったことのなかった6354Fの乗り納めをしに来ました。
6354Fの引退と共にこの編成のためだけに作られた快速特急Aという種別も見納めです。快速特急は私鉄の複数の路線で見ることができますが、かっこいい種別ですよね。
大阪梅田駅の3号線にあがると既に多くの人だかりができていました。
梅田駅のホーム先端は普段から人気の撮影ポイントです。
私は乗車するので早めに乗車位置に並ぶことにしました。
多くのギャラリーに見守られながらやってきました。6354Fです。
京とれいんに改造されてからは京都線では一番短い6連で運用されています。
ここからカメラを取り出してしっかり撮影です。
扇子型のヘッドマークが雅で良いセンスされていますよね(扇子だけに)。
早速乗車しましょう。
案の定座ることはできませんでした。
モーター上で録音しつつ、立ちながら河原町まで向かうことになりました。
快速特急Aは梅田駅を出発してすぐに見所があります。
それは次の十三駅を通過することです。十三駅は関西以外の方にはあまり馴染みのない駅かもしれませんが、阪急屈指のターミナル駅で、神戸線宝塚線京都線の3路線乗り換えのできる駅です。7006Fの快速特急はもちろん停車しますし、特急以下全ての種別が停車する駅です。
なぜこの十三駅を通過してしまうかというと、ホームドアが設置されているからです。
京都線では唯一のホームドア設置駅となっており、先述の通りほかの車両とドア位置のズレている6354Fは通過せざるを得ないのです。
阪急に馴染みのない読者の方に説明すると、東京駅や大阪駅、(北海道の方が多いでしょうから説明しますと)札幌駅を通過してしまうような体験なのです。
十三に停車せず、梅田の次に停車する駅は淡路駅です。
淡路駅も阪急を代表するターミナル駅でして、現在高架駅を建設中です。
この駅は4方向からやってくる線路がX字にクロスしていることで有名です。
高架駅が完成すると京急蒲田駅のような2層式の構造となり、現在より円滑に列車を通すことができそうです。
淡路を出発すると、次は桂まで停まりません。
特急が停車する北摂のベッドタウン、茨木市駅や高槻市駅もバンバン通過していきます。
これは7006Fの快速特急でも通過体験ができるので、今後も楽しめそうです。
桂駅も淡路駅同様、全種別が停車するターミナル駅です。
この駅からは支線の嵐山線が発着しており、6300系の仲間達も活躍しています。
6354Fが引退した今、6300系に乗りたければ嵐山線一択です。
桂駅はもう既に京都市内。
西京極駅を通過すると列車は地下線に入って行きます。
京都市内は用地買収が困難で、1931年(昭和6年)に大宮駅までが開業、大宮駅~河原町駅間も1963年(昭和38年)に開業し、阪急の京都地下線が全通しています。
この地下線は1927年(昭和2年)開業の日本最古の地下鉄、東京メトロ銀座線にも引けを取らない古さなのです。
地下線に入ってから、西院駅、大宮駅を通過して烏丸駅に停車します。
烏丸駅はいわゆる四条烏丸と呼ばれている京都の中心エリアです。
京都市内を南北に貫く地下鉄烏丸線の乗換駅となっているため、河原町駅まで向かわず烏丸駅で下車する人も多いです。
河原町駅を出発するともう終点京都河原町駅は目の前。
6354F快速特急A京とれいんは真ん中の2号線に入線します。
京都河原町駅は京都の繁華街、河原町の真下にある便利な駅です。
大阪梅田駅より東京寄りにあり、並走する東海道本線に合わせて河原町行きが上り列車、梅田行きが下り列車となっています。他の神戸線や宝塚線は梅田行きが上り列車となっているので、京都線だけ異なるポイントです。
この駅は特殊な構造となっており、1号線と3号線の間に2号線が設置されていて、2号線を発着する列車は京とれいんやラッシュ時間帯の7両編成で運行される一部の列車に限られています。
同様の作りをしたホームは淀川の対岸を走る京阪電車の淀屋橋駅でも見ることができます。阪急京都線は元々新京阪鉄道という京阪系の会社が所有していたので、何かの縁を感じますね。河原町駅が開業したのは阪急に吸収された後の話なのでたまたまのような気もします笑
6354Fの車内を詳しくご紹介
京とれいんは折り返し時間がかなり余裕を持たせており、6354Fの内外装をじっくり撮影することができました。乗車していたのは8割が鉄道ファンでしたが、みなさん譲り合って撮影をしていて割とモラルは高かったと思います。平和でした。
ライト周りの銀帯が高級感を引き立てるアクセントとなっています。
先代の京都線特急車2800系にもなかったデザインなので6300系だけの個性です。
快速特急Aの種別幕は「十三通過」と記載されているのが特徴です。
この列車以外は十三に必ず停車しますから注意喚起が必要なのでしょう。
それでは河原町方の先頭車であるC#6454(6号車)から車内を見てまいりましょう!
6354F「京とれいん」は6両繋げていますが、梅田方2両、真ん中の2両、河原町方2両で異なる仕様となっており、3種類楽しめるところも見所となっています。
乗務員室扉の上にアルナ工機の銘板が貼られています。
こちらは京とれいん10周年の際に製作され貼られているものです。
現在は社名がアルナ車両に変わっていますし、銘板のデザインも変わっているので昭和の時代の銘板を復刻した貴重なものとなっています。
阪急はリニューアルが行われるとオリジナルの銘板が撤去されて新しいものに交換されるので、古いデザインの銘板は今後貴重になる一方です。
そんな古いデザインの銘板に2011年の文字が入っていることもレアです。このようなことができるのもアルナ車両が阪急グループで身内だからできることですよね~。
運転台は同世代の6000系や7000系列と同じレイアウトのものになっています。
1975年(昭和50年)登場の6300系ですが、当時としては先進的なワンハンドルマスコンです。
阪急は東急と親交が深いためか、東急と同じ両手操作式(T字型)のマスコンなんですよね。
そもそも、現在でも関西の鉄道事業者は私鉄・JR共にツーハンドルを選択し続けていますから、ワンハンドル自体が関西圏では少数派なのも付け加えておきます。
乗務員室後ろの座席だけはロングシートとなっています。
ただし、肘掛けだけは他の車両と異なる京とれいん独自仕様。
壁側にも肘掛け用のクッションが設置されているのは観光列車だけの気配りですね。
こちらは現行バージョンのアルナ車両銘板です。
改造やリニューアルを受けるとこの銘板に交換されてしまい、製造年もぱっと見分からなくなるのが阪急リニューアル車の悩みです。会社としては綺麗にして車齢もごまかしたいのかも笑
両端の4両はオリジナルの面影を残すクロスシートとなっています。
2扉なのでずらっと並ぶ座席が特急用車両の風格を感じさせてくれます。
窓枠も独立窓の一般車両とは異なるユニットサッシとなっています。
2枚1組のこの見た目は先代特急車の2800系を踏襲しています。
車端部には座席がなく、扉が設置されているだけです。
乗降扉や貫通扉はオリジナルのままとなっていて化粧板だけ張り替えられています。
点字プレートが貼られているのは6両固定編成の証。
京都線所属の2連や8連で暫定7連や暫定6連になることのある編成は、号車番号が変動することがある為、点字プレートは貼られていません。
車端部にはパンフレット置き場が設置されており、京都ガイドマップが配布されています。
日本語&英語、中国語、韓国語の3種類が用意されています。
車端部には号車表記があります。背の高い転落防止幌も6300系の特徴です。
続いてC#6914(5号車)のご紹介。
車内には京とれいんの為だけに作られたと思われる京都線の路線図があります。
9300系と6354F、7006Fにだけ設置されている阪急Wi-Fiの表記も。
5号車も6号車と同じ車内仕様です。
京都方2両に使用されているモケットは抹茶を想起させる緑色となっています。
続いてC#6814(4号車)とC#6904(3号車)のご紹介。
この2両は観光列車にするべく大きく改造されている車両です。
この2両はボックスシートとなって家族連れに人気の座席でした。2列+1列の構成となっていました。照明も9000系列のような間接照明となっています。
2列側に関しては車端部側のみ3人(1+2)、中央部は4人ボックス席となっていました。
仕切りも高めに設置されていたので半個室のような空間になっており、落ち着いた雰囲気でした。
乗降扉周辺と座席エリアは格子状の壁で仕切られており、車端部は簡易的なデッキのような空間に仕立てられていました。
そのデッキっぽくなっている車端部はこちら。
基本的に先ほど紹介した他の号車と違いはありませんが、この2両だけ貫通扉が新しい縦長ガラスのものに交換されています。また、照明がスポットライトとなっていて暖かい雰囲気です。
外装も見ていきましょう。
7006F「京とれいん 雅洛」の方は金色のラインが多く、ちょっとキラキラしすぎているように思うのですが、6354Fの方はシルバーを多用することで落ち着いたデザインとなっています。
阪急マルーン自体が素敵な塗装ですが、その良さを台無しにせず、かつ京とれいんの特別感を演出してくれる絶妙なラインを攻めた塗装だと思っています。ちょうど良い塩梅。
車内に戻りまして、続いてC#6914(2号車)とC#6354(1号車)のご紹介です。
記事を作成している今になって気がつきましたが、C#6914だけ車番プレートを撮り損ねていますね(T-T)
梅田方2両は河原町方2両と同じオリジナルの座席ですが、モケットカラーが阪急らしからぬ明るいオレンジ色のものになっています。阪急伝統のアルミ鎧戸も減少傾向です。これ結構重くて慣れていないと開け閉めが難しいです。
ドアに近い部分にだけ吊革が設置されていますが、中心部分にはありません。
改造前に写真手前の茶色い場所に設置されていた折りたたみ座席は撤去されています。
6354Fが引退すると嵐山線でしか見られなくなる6300系。
検査などで本線を走行することがあっても、河原町の方に来ることは無いでしょうから、河原町駅に停車している6300系の姿を見るのも最後になりそうです。
帰りは快適な転換クロスシートに座りながら梅田へ
帰りは座ることに成功しました。C#6914(5号車)の1B席です。
特急車ということもあり座席番号もしっかり振られております。後継の9300系は座席番号が振られていなかったような…そういうところで風格の違いをどうしても感じてしまいます。
座席などは変わっていますが、天井はほぼ手つかずでオリジナルを保っています。
大きい蛍光灯カバーに無機質な冷房吹き出し口がザ・昭和の車両という感じです。
取っ手の金具が現代の転換クロスシートには無いデザインですよね。
ということで往路よりも復路では良質な走行音も収録することができ、快適な座席に身を委ねながら大阪梅田駅に戻ってくることができました。
リニューアルの受けた車両は阪急電鉄のコーポレートマークが車体下部に設置されるのがセオリーですが、6354Fも例外では無く設置されています。ただ、3扉の一般車両とは設置位置が異なり、6300系の場合は車番真上にあります。
復路の全区間走行音です。
やはり、直流モーター車特有の折り返し時のブラシ音がクセになります。
この転換クロスシートは登場時から自動転換に対応しており、折り返し時には乗務員のスイッチ操作で一斉転換が行われます。それは後継の9300系にも継承されていますね。
京とれいんの金色のステッカーは2019年に全般検査を受けた際に新たに貼られたものです。7006Fの「京とれいん 雅洛」がデビューするのに合わせて6354Fにも同じデザインのものが貼られてコンセプトの共通化が図られました。
車内整理が終わると梅田駅で待ち構えていた鉄道マニアが一斉に先頭車に押し寄せていました。やはり最前部は展望を楽しむ方々で大繁盛でしたね笑
私は1往復に留めたのでここでお見送り。
ラストランまで残り1日。きっと何往復も乗っている人もいたんでしょうね(^_^;)
6354Fを見送った後もホームで撤去されそうなものを見つけては撮影しました。
こういったポスターからも「京とれいん」の文字が消えて、「雅洛」もしくは「京とれいん 雅洛」だけになるんでしょうね~。
神宝線は朝ラッシュ時間帯の10両運転を除いて基本的に8両で統一されていますが、京都線は7両も混在しており、6両の京とれいんも含め3種類の編成数を見ることができます。
最終運行日は撮影!
翌2022年(令和4年)12月11日、6354F「京とれいん」最終運行日。
私は最後の勇姿を撮影しに行くことにしました。
駅はマニアが駆けつけて混雑しているでしょうから、沿線で撮影してみました。
日常の修行が足りず、不満点も多いですが、ひとまず走行写真を撮れてよかったです。
後ろ姿を撮影してみると、梅田方と河原町方でヘッドマークの色使いが異なることが分かります。
そのあと、京とれいん停車駅の淡路駅で折り返しの6354Fを待つことにしました。
普通の特急が1本前を先行するのですが、「京とれいん」はこのあとやってくる旨を告知する表示も見納めでしょうね…。
やってきました。これが河原町行き最後の運行です。
この後、河原町で折り返して梅田行きとなる列車が本当の最終列車となります。
阪急沿線に住んでいた4年間、3300系ばかりを追っかけていたので最後の最後になって興味を持ちましたが、阪急ファンに愛されている車両なんだということがとても分かりました。
阪急電車の看板車両だった6300系が特急運用を離脱して10年が経過しても、定期運用を持ち本線を疾走していたことはスゴいことだったんだなぁ、、って引退した今思います。
淡路駅の「京とれいん」乗車位置も撮影しておきました。
当たり前ですが、各駅ごとに発車時刻が異なるので表記が違います。
ダイヤ改正をまだ迎えていませんでしたが、翌日の12月12日には消されていました。
12月11日の最終運行の後、終電後に消す作業が行われたのでしょうね。
おわりに
ということで6354Fの最後の勇姿をお伝えしてまいりました。
1975年(昭和50年)の登場以来、京都本線を駆け抜け続けてきた阪急のクイーン6300系。2022年(令和4年)12月11日をもって本線での定期運用、そして営業運転で爆走する姿は見られなくなりました。
しかし、今後ももうしばらくは嵐山線で6300系の活躍を見ることができそうですし、6354Fに関しては2023年(令和5年)9月現在も解体されずに正雀車庫で寝ています。ちょっと前に阪急公式で有料の撮影会が行われていましたね…静態保存でも良いから残して貰いたいものです。
機会があれば「京とれいん 雅洛」も乗車したいと思っているので、そのうち出すかもしれません(期待値は低めでお願いします笑)
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
また次の記事でお目にかかりましょう。